──────────────────
70歳代男性。
大腸癌術後。
──────────────────
早朝、突然のシバリング。
しかし体温は平熱でした。
「熱がないなら、様子見なのかな?」
一瞬、そう思いかけました。
しかし採血結果を見て、
違和感は確信に変わりました。
ーー
・WBC 12,300 /μL
・好中球 89 %
・CRP 29 mg/dL
・Hb 10 g/dL
・PLT 31万 /μL
大腸手術後のCRPは、通常POD2〜3(術後2〜3日)で10〜15程度をピークに、その後下降していきます。
ところがCRP 29。
これは「術後反応」としては説明しにくい値でした。
さらに好中球優位。
そして何より
シバリング。
悪寒戦慄は、単なる寒気ではありません。
菌血症を強く疑う症状のひとつです。
高齢者では、発熱より先に悪寒が出ることがあります。
むしろ、発熱がないことは安心材料にはならない。
そんな印象を受けました。
ーー
これは敗血症の入り口かもしれない
この時点で疑ったのは、
・縫合不全
・腹腔内膿瘍
・カテーテル関連血流感染
そして、それに伴う菌血症でした。
敗血症を考えるとき、
qSOFAは重症化リスクを見る一つの手がかりになります。
ただし、qSOFAだけで敗血症を判断するものではありません。
呼吸数、血圧、意識状態に加えて、
乳酸値や感染巣の有無を合わせて評価する必要があります。
この時点では、血圧は保たれていました。
しかし、
・CRP 29
・好中球優位
・シバリング
という組み合わせは、
「これから崩れる可能性がある状態」
として見ておく必要があると感じました。
ーー
発熱がないからこそ、危ない
術後患者でCRP 20以上。
そこにシバリングが重なる。
これは「これから崩れる」前兆の可能性があります。
敗血症は、突然悪化したように見えて、
実は静かに進行していることが少なくありません。
この段階で考えられる対応は、
・血液培養
・乳酸値測定
・感染源検索
・抗菌薬調整
でした。
実際、このあと抗菌薬は増強されていました。
まだ血圧は保たれており、
qSOFAを満たす状態ではありませんでした。
それでも、
「このままでは危ないかもしれない」
という臨床判断があったのだと思います。
数値が大きく崩れる前に動く。
今回の症例では、
その重要性を強く感じました。
ーー
あの朝の違和感
「熱がないのに、何かおかしい。」
その直感は、
CRPの高さと好中球比率、
そしてシバリングが裏付けていました。
発熱は、最後に現れることもあります。
ーー
💡この症例から学んだこと
・悪寒戦慄は菌血症を疑う重要なサインになる
・発熱がなくても、重症感染は否定できない
・術後CRPは「どのくらい高いか」だけでなく「経過」が重要
・敗血症は、崩れる前から静かに進行していることがある
・数値が大きく動く前の違和感を大切にする
ーー
検査値は、
派手に異常を示すとは限りません。
むしろ、
「まだ大きく崩れていないのに、何かおかしい」
そんな違和感の中に、
危険のサインが隠れていることがあります。
今回の症例は、
それをあらためて考えさせられた一例でした。
