発熱と咳。細菌?ウイルス?

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5歳女児。

持続する38℃台の発熱、湿性咳嗽あり。

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検査結果は、

白血球 10000/μL以上
好中球 70%以上
赤血球 400万/μL
血小板 32万/μL
IgM 330 mg/dL
C3 140 mg/dL
プロカルシトニン(PCT)0.04 ng/mL

自動血球分析装置では、
blastフラグ、異型リンパ球フラグが出ていました。

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まず目についたのは、白血球10000/μL以上で、好中球70%以上という値でした。
発熱が続き、咳もあることから、

「細菌感染だろうか」

と考えました。

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しかし、気になったのは
PCT 0.04 ng/mL
という結果。

PCTは細菌感染、とくに侵襲性細菌感染や敗血症で上昇しやすいマーカーです。

一方、ウイルス感染ではほとんど上昇しません。

PCTが極めて低値だったため、最初に考えた細菌感染という印象が少し揺らぎました。
そこで、ウイルス感染の可能性も含めて考え直すことにしました。

もちろん、この値だけで細菌感染を否定することはできません。
局所の細菌感染や感染初期では低値のこともあります。

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次に気になったのが、
異型リンパ球フラグでした。
異型リンパ球は、ウイルス感染でみられる代表的な所見です。

そのため、
「ウイルス感染かもしれない」
そう思いました。

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ただし、ここで注意したいのが、
異型リンパ球フラグは異型リンパ球を確定するものではないという点です。

自動分析装置は細胞の大きさや内部構造から異常を検出しており、フラグは「通常とは異なるリンパ球がありそう」というサインに過ぎません。

特に小児では、成人よりリンパ球が活発に働く時期であり、やや大型で細胞質の豊富なリンパ球がみられることがあります。そのため、自動分析装置では異型リンパ球フラグが立つこともあります。

さらに今回はblastフラグも出ていました。
blastフラグは白血病などの芽球を疑う重要なフラグですが、反応性変化でも認められることがあります。

このようなフラグが出た場合は、
末梢血塗抹標本で実際の細胞形態を確認することが重要です。

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咳の性状から考える

今回の咳は湿性咳嗽でした。
湿性咳嗽は、気道内の分泌物を排出するために起こる咳です。

一方、乾性咳嗽は分泌物が少なく、気道への刺激によって起こります。
マイコプラズマ肺炎やウイルス感染初期では乾性咳嗽が多いとされますが、経過とともに湿性へ変化することも珍しくありません。

そのため、
湿性咳嗽だけで細菌感染とは判断できません。
今回は「気道内に分泌物を伴う炎症がある」という情報として捉えました。

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IgMは330 mg/dLとやや高値でした。

ただし、総IgMなのか病原体特異的IgMなのかで意味は大きく異なります。

今回は総IgMであれば、感染に伴う免疫応答の一つとして考えられます。

一方、C3は140 mg/dLで明らかな低下は認めませんでした。
補体は感染防御に重要な役割を担う一方、免疫複合体が形成される疾患では消費され、低下することがあります。

小児で補体低下をみたときに代表的な疾患の一つが、溶連菌感染後急性糸球体腎炎(PSAGN)です。
PSAGNでは、溶連菌感染後に形成された免疫複合体が糸球体に沈着し、補体が活性化・消費されるため、C3が低下することが特徴です。一方、C4は正常であることが多く、C3は通常6〜8週間で回復します。この補体活性により、血尿や蛋白尿が見られます。

今回の症例ではC3は正常であり、PSAGNやSLEなどの補体消費を伴う病態を積極的に示唆する所見はありませんでした。

もちろん、C3が正常だから感染症を否定できるわけではありませんが、小児では補体の値も病態を考える手がかりの一つになります。

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この症例では、
好中球優位で細菌感染を疑わせる一方、
PCTは極めて低値でした。

さらに異型リンパ球フラグも認めましたが、フラグだけでウイルス感染と判断することはできません。

小児では異型リンパ球フラグが立ちやすいこともあり、blastフラグも含めて塗抹標本による形態確認が重要です。

検査値を総合すると、
侵襲性細菌感染の可能性は低く、まずウイルス感染を考える一方、局所の細菌感染や混合感染も鑑別に残すという考え方になりました。

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💡症例から学んだこと

・PCTは侵襲性細菌感染の評価に有用だが、局所の細菌感染や感染初期では低値のこともある
・小児では成人より大型で反応性を示すリンパ球がみられることがあり、自動分析装置で異型リンパ球フラグが立つことがある
・blastフラグや異型リンパ球フラグが出た場合は、末梢血塗抹標本で実際の細胞形態を確認することが重要
・湿性咳嗽=細菌感染、乾性咳嗽=ウイルス感染とは言い切れず、咳の性状はあくまで病態を考える手がかりの一つである
・小児ではC3の値も重要な情報であり、PSAGNなど補体消費を伴う疾患を念頭に置いて評価する
・検査は一つで決めない。複数の検査結果と症状をつなげて考えることが、病態を理解する近道になる