発熱と痙攣の裏で進行していたもの 第2章 血小板低下とDダイマー上昇が教えてくれたこと

前回は、発熱と痙攣で来院した患者さんが、ショック状態に陥っていたことを振り返りました。

今回は、その後の検査で見えてきた凝固異常についてです。

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フィブリノゲン 170mg/dL
Dダイマー 50μg/mL以上
血小板 9万/μL(前回 約18万/μL)

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血小板は短期間で半分まで低下していました。
この数字を見て、まず頭に浮かんだのは


DIC(播種性血管内凝固症候群)

でした。

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DICとは、

全身で凝固系が異常に活性化し、微小血栓が形成される病態です。
その結果、
血栓による臓器障害が起き、同時に出血傾向にもなります。

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DICの本質は「凝固」と「線溶」の異常

まず炎症や組織障害によって、組織因子(Tissue Factor)が発現します。
すると外因系凝固経路が活性化され、トロンビンが大量に産生されます。

トロンビンはフィブリノゲンをフィブリンへ変換し、全身の細小血管に微小血栓を形成します。

一方、体はできた血栓を溶かそうとします。
血管内皮からt-PAが放出され、プラスミノゲンがプラスミンへ変換されることで、フィブリンは分解されます。

この時に産生されるのが、

FDPやDダイマーです。

つまりDICでは、

血栓を作る反応(凝固)と、
血栓を溶かす反応(線溶)が同時に起こっています。

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「血栓ができる病気なのに、なぜ出血するのだろう。」

最初は不思議に感じました。

理由は二つあります。

まず、血栓を作り続けることで、

血小板
フィブリノゲン
凝固因子

が大量に消費されます。

さらに線溶系が働くことで、
病的な血栓だけでなく、本来止血に必要な血栓まで分解されます。

その結果、
出血しやすい状態になります。

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DICの病態分類

DICは一つの病気ではなく、病態によって大きく3つに分類されます。

・線溶抑制型(代表:敗血症)
・線溶亢進型(代表:急性前骨髄球性白血病〈APL〉、大動脈瘤など)
・均衡型(代表:固形がん)

今回重要なのは、
敗血症性DICは線溶抑制型である

という点です。

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敗血症では、

TNF-αやIL-1、IL-6などの炎症性サイトカインが大量に放出されます。

これらは組織因子の発現を促進し、
凝固系を強力に活性化します。

その結果、
全身に微小血栓が形成されます。

一方で、
敗血症では

PAI-1(プラスミノゲンアクチベーターインヒビター-1)

が増加します。

PAI-1は、t-PAの働きを抑制するため、
プラスミンが十分に作られず、
血栓を溶かす力が低下します。

つまり、

凝固は強く進むのに、線溶は十分に働かない状態になります。

このため微小血栓が全身に残り、
腎臓、肺、肝臓、脳などの血流を障害し、
多臓器不全へと進行します。

敗血症性DICは、

「出血の病気」というより、
微小血栓による臓器障害が主体となる病態

と考えた方が理解しやすいです。

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Dダイマー 50μg/mL以上

非常に高い値でした。

体内で血栓形成と線溶が起こっていることを示しています。

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血小板 9万/μL
前回は約18万/μLでした。

絶対値だけでなく、
短期間で半減している
ことが重要です。

DICでは微小血栓形成のため、
血小板が大量に消費されます。

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フィブリノゲン 170mg/dL

一見すると、
それほど低くない値に見えます。

しかし、
フィブリノゲンは急性期蛋白です。


敗血症ではIL-6などの作用によって、
肝臓でフィブリノゲン産生が亢進し、
高値となることもあります。

そのような病態で170mg/dLという値は、

単なる正常ではなく、
消費されている可能性を考えました。

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APSの既往で気になったこと

この患者さんには、
抗リン脂質抗体症候群(APS)がありました。

APSでは血栓ができやすくなります。

さらに、
劇症型抗リン脂質抗体症候群(CAPS)では、

短期間のうちに全身へ微小血栓が形成され、
急速に多臓器不全へ進行します。

検査所見も、血小板低下やDダイマー上昇など、
DICと非常によく似ています。

フィブリノゲンは、急性期蛋白として保たれたり、高値を示すことがあります。

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この症例では

APSという背景があったため、

CAPSも鑑別に挙げました。

しかし、

・約41℃の高熱
・敗血症を疑う臨床像
・血小板の急激な低下
・Dダイマー著明高値
・フィブリノゲン低下傾向

これらを総合すると、
この時点では敗血症に伴うDIC
が最も病態を説明しやすいと考えました。

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💡この症例から学んだこと

・DICは「凝固」と「線溶」の異常が同時に起こる病態であること
・出血傾向は、凝固因子の消費と止血に必要な血栓の分解によって生じること
・敗血症性DICは線溶抑制型であり、微小血栓による臓器障害が主体となること
・フィブリノゲンは急性期蛋白であり、敗血症では高値になることもあるため、病態を踏まえて解釈する必要があること
・APSの既往がある患者ではCAPSも鑑別に挙げ、検査値だけでなく臨床経過を含めて総合的に判断すること

ここでは、血小板、Dダイマー、フィブリノゲンという3つの検査値が、全身で異常な凝固反応が起きていることを教えてくれていました。