発熱と痙攣の裏で進行していたもの 第一章 発熱と痙攣、その裏にあったショック

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高齢女性。
発熱と痙攣を主訴に受診。

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既往に、抗リン脂質抗体症候群(APS)を含む複数の自己免疫疾患を抱えている患者さんでした。

受診時のバイタルは、

・意識障害
・体温 約40℃
・血圧 約60/40 mmHg
・心拍数 160回/分台
・呼吸数 40回/分台

かなりの重症感がありました。

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「ショック状態だ。」

そう感じました。

血圧60台。頻脈。頻呼吸。意識障害。

体の組織に十分な酸素が届けられていない状態が起きているはずです。

ーー

ショックとは、
組織に必要な酸素が十分に供給されなくなった状態
をいいます。

酸素が足りなくなると、
細胞は好気性代謝ができなくなり、
嫌気性代謝へ移行します。

その結果、
乳酸が産生されます。
さらに進行すると、

・代謝性アシドーシス
・臓器障害
・多臓器不全

へとつながっていきます。

ーー

翌日の血液ガスでは、
乳酸が約37 mg/dLでした。

乳酸は mmol/L で考えることが多いため、
37 ÷ 9 ≒ 4.1 mmol/L
となります。

一般に、

乳酸 4 mmol/L以上は、
重度の組織低酸素を示唆する値です。
この数字を見て、

「やはりショックだった」
と考えました。

ーー

ショックは大きく4つに分類されます。
原因によって、
現れる検査値にも特徴があります。

①低容量性ショック
(出血・脱水・熱傷など)

循環血液量が減少

静脈還流低下

心拍出量低下

組織低酸素

・Hb↑
・Ht↑
・Alb↑
→水分(血漿)が先に失われるため、血液が濃縮して見えます。

・BUN↑
・BUN/Cr比↑
→腎血流が低下し、RAA系が活性化します。水とNaを再吸収する際にBUNも一緒に再吸収されるため上昇します。

・Na↑
→ 自由水の喪失がNaの喪失より大きいと、相対的にNa濃度が上昇します。

・乳酸↑
→ 組織低酸素によって嫌気性代謝へ移行し、乳酸が産生されます。

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② 心原性ショック
(心筋梗塞・重症心不全など)

心臓のポンプ機能低下

心拍出量低下

全身低灌流

組織低酸素

・BNP↑
・NT-proBNP↑
→ 心室が伸展し、心筋から分泌されます。

・トロポニン↑
・CK-MB↑
→ 心筋虚血や壊死によって細胞内酵素が血中へ漏れ出します。

・AST↑
・LD↑
→ 心筋障害や肝うっ血、虚血性変化によって上昇します。

・乳酸↑
→ 心拍出量低下による組織低酸素の結果として上昇します。

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③ 分布異常性ショック
(敗血症・アナフィラキシーなど)

炎症やサイトカイン放出

血管拡張

相対的循環血液量不足

組織低酸素

さらに、
凝固系や炎症系も活性化され、
臓器障害へ進展します。

・乳酸↑
→ 組織低酸素に加え、ミトコンドリア機能障害によっても上昇します。

・CRP↑
→ IL-6の作用で肝臓から産生されます。

・プロカルシトニン↑
→ 細菌毒素や炎症性サイトカインによって全身組織から産生されます。

・Dダイマー↑
→ 凝固系が活性化し、血栓形成と線溶系活性化が起こるため上昇します。

・血小板↓
→ DICによる消費で低下します。

・フィブリノゲン↓
→ DICで消費されます。

ただし、
敗血症では急性期蛋白でもあるため、
初期には上昇することもあります。

そのため、
炎症が強いのにフィブリノゲンが低い
という状況は、
消費性凝固を疑うヒントになります。

・呼吸性アルカローシス
→ サイトカインや低酸素により呼吸中枢が刺激され、過換気になります。

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④ 閉塞性ショック
(肺塞栓・心タンポナーデ・緊張性気胸など)

血流の通り道が物理的に障害される

静脈還流低下

心拍出量低下

組織低酸素

・Dダイマー↑
→ 肺塞栓では血栓形成と線溶系活性化によって上昇します。

・BNP↑
→ 右室圧負荷により心室が伸展し分泌されます。

・トロポニン↑
→ 右室虚血や心筋障害で上昇します。

・乳酸↑
→ 組織低酸素による嫌気性代謝で上昇します。

・呼吸性アルカローシス
→ 低酸素に対する過換気によってPaCO₂が低下します。

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今回の症例では

・高熱
・頻呼吸
・乳酸上昇
・血小板低下
・Dダイマー上昇

がありました。
さらに、

約40℃という高熱もあります。

そのため、検査所見から
分布異常性ショック、つまり敗血症ショック
をまず考えました。

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最初の主訴は、

発熱と痙攣でした。

しかし、

バイタルと検査値を見ていくと、
その背景には、
すでに全身の循環不全が起こっている可能性が見えてきました。

ショックは、
単なる低血圧ではありません。
組織が酸素不足になり、
その結果として、
乳酸上昇、臓器障害、そして多臓器不全へとつながっていく病態です。

「かなり危ない。」

検査値とバイタルから十分に伝わってきた症例でした。

ーー

💡この症例から学んだこと

・ショックとは組織低酸素の状態であること
・乳酸上昇は組織低酸素の重要な指標になること
・ショックは4つに分類して考えること
・検査値の変化には、それぞれ病態生理に基づく理由があること
・バイタルと検査値を組み合わせることで病態が見えてくる