検体溶血と体内溶血 ― 検査値の違い

生化学検査でLDやKが高値になったとき、

検体溶血による影響なのか、
患者の体内で溶血が起こっているのか、

を考える必要があります。

🩸検体溶血と体内溶血

検体溶血(in vitro hemolysis)

採血時や検体の搬送・処理過程で赤血球が壊れる現象。

赤血球の破壊により、赤血球内の成分が血清・血漿中へ放出し、LD・K・ASTなどが偽高値

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体内溶血(in vivo hemolysis)

患者の体内で赤血球の破壊が亢進する状態。

  • 血管内溶血:血管内で赤血球が直接破壊される
  • 血管外溶血:主に脾臓・肝臓のマクロファージが赤血球を処理する

🩸 検体溶血と体内溶血の鑑別に役立つ検査項目

LD・K・AST ↑

検体溶血・体内溶血の両方で上昇

※体内溶血ではKが必ず高値になるわけではなく、腎機能や排泄などにも左右されます。

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間接ビリルビン ↑

体内溶血で上昇。

赤血球が破壊・ヘモグロビンからヘムが遊離
ヘム → ビリベルジン → 間接ビリルビン

検体溶血では、この代謝過程による増加は起こりません。

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ハプトグロビン ↓

体内溶血、特に血管内溶血で低下。

遊離Hbが増加
↓
ハプトグロビンと結合し、複合体が体内で除去される
↓
ハプトグロビン低下

検体溶血では、患者体内での消費・除去は起こりません。

※肝機能障害では低下し、炎症では上昇することがあります。

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網赤血球 ↑

体内溶血で増加することが多い。

赤血球の破壊が亢進
↓
不足した赤血球を補うため骨髄で造血が亢進
↓
網赤血球増加

※急性溶血の直後や骨髄不全を合併する場合は、増加が不十分なことがあります。

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尿所見

血管内溶血ではヘモグロビン尿が出現することがある。

大量の遊離Hbが発生
↓
ハプトグロビンの結合能力を超える
↓
遊離Hbが腎臓で濾過される
↓
ヘモグロビン尿

慢性的な血管内溶血では、尿細管上皮細胞に取り込まれたHb由来の鉄がヘモジデリンとして蓄積し、尿中に脱落した細胞などから検出されることがあります。

→ 尿ヘモジデリン陽性(ベルリンブルー染色)

🩸検査値を判断するときの注意点

♢変化には時間差がある

  • LD:赤血球破壊に伴い比較的早期から上昇
  • 間接Bil:ヘムの代謝を経て上昇
  • ハプトグロビン:遊離Hbとの結合・除去によって低下
  • 網赤血球:骨髄の反応を経て増加

急性溶血では、すべての項目が同時に異常値になるとは限りません。

♢複数の所見を組み合わせる

採血状況・過去値・LD・間接Bil・ハプトグロビン・網赤血球・尿所見などを合わせて判断します。

♢測定の干渉を考える

遊離ヘモグロビン(Hb)はビリルビンと吸収スペクトルが一部重なるため、測定に干渉することがあります。測定法によっては、偽高値または偽低値を示す場合があります。

【代表的な吸収極大波長】

・ビリルビン:約450 nm
・オキシヘモグロビン:約415 nm、541 nm、577 nm

※吸収極大波長は測定条件によって変化します。また、実際のビリルビン測定では、測定原理や試薬によって使用する波長が異なります。

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左くらいの色調から再採血してもらっています。
右は高度溶血で、検査値に大きな影響を及ぼします。

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検体溶血と体内溶血は、どちらも赤血球が壊れる現象ですが、検査値が変化する理由は異なります。

LDやKなどの成分の放出だけでなく、ヘモグロビンの代謝・ハプトグロビンの消費・骨髄の反応に注目することが、両者を考える手がかりになります。