追記:IgMと補体について

◾️IgM

IgMは、抗原に初めて出会ったときの一次免疫応答で比較的早期に産生される抗体です。

そのため、
IgM=感染初期
というイメージがあります。

ただし、ここで大事なのは、
何に対するIgMなのかということです。

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特異的IgM

例えば、

・EBV-IgM
・CMV-IgM
・Mycoplasma pneumoniae IgM

などです。

これは、特定の病原体に対するIgMなので、急性感染や初感染を考える手がかりになります。

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総IgM

これは血液中にあるIgM全体の量を測定しているため、
何に対するIgMが増えているのかまでは分かりません。
そのため、
総IgM高値=感染初期
とは判断できません。

総IgM高値では、

・感染
・慢性炎症
・自己免疫疾患
・肝疾患

などによるポリクローナルな増加を考えます。

また、

・Waldenströmマクログロブリン血症
・IgM型MGUS

などでは、単一クローン由来のモノクローナルなIgM増加を認めます。

◾️補体

補体は、血液中に存在する蛋白群で、

病原体を排除するために連鎖的に活性化される自然免疫の仕組みです。

補体の活性化には、

古典経路
レクチン経路
代替経路

の3つがあります。

入口は違いますが、最終的にはすべてC3で合流します。

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① 古典経路

古典経路は、
抗原抗体複合体をきっかけに始まります。
IgGやIgMに抗原が結合するとC1が活性化され、

C1

C4・C2

C3

と進みます。

つまり古典経路では、
C4とC3の両方を使うということです。

代表的な病態が、
SLEやループス腎炎です。

SLEでは自己抗体と自己抗原が免疫複合体を形成し、古典経路が活性化されます。
その結果、補体が消費され、

C3低下
C4低下
CH50低下

を認めることがあります。

そのため、
C3↓+C4↓
という組み合わせでは、SLEなどの免疫複合体性疾患を考える手がかりになります。

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② レクチン経路

レクチン経路は、
抗体を使わずに病原体を認識する経路です。

病原体表面にあるマンノースなどの糖鎖を、MBLやフィコリンが認識します。

その後、

MASP

C4・C2

C3

と進みます。
つまり、入口は古典経路とは違いますが、
古典経路と同じくC4を使う経路です。

細菌、ウイルス、真菌などに対する感染防御に関わっています。

ただし、通常のC3・C4測定だけで、
「これはレクチン経路が動いている」
と判断することは難しいです。

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③ 代替経路

代替経路は、
抗体を必要としない経路です。

C3は血中で少しずつ自然に活性化されています。
そこから生じたC3bが病原体表面に付着すると、
B因子やD因子が関与して反応が増幅されます。

この経路では、C4を使いません。

そのため、
C3低下+C4正常
というパターンでは、代替経路優位の活性化を考えます。

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小児で覚えておきたいPSAGN

小児でC3低下をみたときに、代表的な疾患の一つが、

溶連菌感染後急性糸球体腎炎(PSAGN)です。

PSAGNでは、溶連菌感染後に補体が活性化され、特に代替経路が関与します。

そのため、

C3低下
C4は正常

となることが多いです。

臨床的には、

血尿、蛋白尿、浮腫、高血圧

などを認めます。
また、低下したC3は、多くの場合、経過とともに回復します。

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ざっくり整理すると、

C3↓+C4↓
→ 古典経路を含む補体活性化
→ SLE、ループス腎炎など

C3↓+C4正常
→ 代替経路優位
→ PSAGN、C3腎症など

C4↓+C3正常
→ 古典経路上流の異常を考える
→ 遺伝性血管性浮腫など

という見方ができます。

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遺伝性血管性浮腫では、なぜC4だけ下がる?

遺伝性血管性浮腫(HAE)では、C1インヒビター
の量が少ない、または機能が低下していることがあります。
C1インヒビターは、古典経路の入口にブレーキをかける蛋白です。

これがうまく働かないと、

C1が過剰に活性化

C4・C2が持続的に消費

C4低下 

となります。

では、なぜC3は正常なのでしょうか。

ポイントは、
補体活性化が主にC1・C4・C2という上流で起こっており、C3以降まで強く活性化され続けるわけではない
ということです。

そのため、
C4は消費されるけれど、C3は比較的保たれる
というパターンになります。

つまり、

C1インヒビター異常

C1の抑制が効かない

C4・C2を消費

C4低下

C3は比較的正常

という流れです。

また、HAEの浮腫そのものの主役は補体ではありません。

C1インヒビターは、補体系だけでなく接触系にもブレーキをかけています。

C1インヒビターが働かないと、ブラジキニンが過剰に産生されます。

ブラジキニンは血管透過性を高めるため、

・顔面浮腫
・四肢の浮腫
・腹痛
・喉頭浮腫

などを起こします。

そのため、HAEでは
C4低下+C3正常
が重要な検査上のヒントになります。

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3つの経路は最後にC3で合流する

古典経路、レクチン経路、代替経路は入口が違いますが、
最終的にはすべてC3の活性化につながります。

C3が分解されると、

C3a
→ 炎症を促進
→ 血管透過性を高める

C3b
→ 病原体表面に付着
→ オプソニン化
→ 好中球やマクロファージに貪食されやすくする

という働きをします。

さらにC5が活性化され、

C5a
→ 強い炎症作用
→ 好中球を炎症部位へ誘導

C5b
→ C6・C7・C8・C9
→ MAC(膜侵襲複合体)

となり、

病原体の細胞膜に穴をあけます。

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💡覚えておきたいこと

・総IgM高値=感染初期、ではない
・急性感染を考えるときは「何に対するIgMか」が重要
・補体には古典・レクチン・代替の3経路がある
・3経路はすべてC3で合流する
・古典経路とレクチン経路はC4を使う
代替経路はC4を使わない
・C3↓+C4↓ではSLEなどを考える
・C3↓+C4正常ではPSAGNなどを考える
・C4↓+C3正常ではHAEなどを考える
・HAEではC1インヒビター異常によりC4が上流で消費されるが、C3まで強く活性化されないためC3は比較的保たれる
・C3・C4だけで診断せず、CH50、自己抗体、尿所見、臨床経過と合わせて評価する